本当に効果あり?データで見る宮城・仙台への観光旅費半額施策

宮城県への観光旅費が半額になる!?

先日、河北新報にて衝撃的なニュースが報じられました。

宮城県の観光施策として、なんと、宮城県を訪れる観光客の宿泊代や交通費を半額程度助成する事業を開始するというものです。

震災前から、JRと共同で仙台・宮城デスティネーションキャンペーンなどを開催し、観光客の集客に熱心だった宮城県ですが、ここにきて大胆な施策を打ち出しました。

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以下に河北新報のニュースを抜粋します。

宮城県は19日、県内を訪れる観光客の宿泊代や交通費を、半額程度助成する事業に新年度から取り組む方針を固めた。旅行券や旅行商品を販売する事業者などに割引相当額を補助し、東日本大震災で落ち込んだ観光客入り込み数の回復を期す。

補助対象は、インターネットのサイトや旅行会社の窓口で販売される宿泊施設と鉄道や飛行機のパッケージ商品など。
ほかに、観光客が県内の宿泊施設で利用可能な旅行券をサイトや旅行会社、コンビニエンスストアなどで割引価格で購入できるようにする。

補助率は現時点で5割程度を見込み、観光客1人当たりの利用上限は原則として設けない。観光客の居住地も制限せず、県内在住者でも利用できる。
中部地方以西など、県内を訪れる人が少ない遠方からの観光客ほど割引幅が大きくなる制度設計も模索する。

引用元:宮城県、観光客の旅費半額補助へ(河北新報 Online News)

この施策は、政府の地域住民生活緊急支援交付金(地方創生予算にあたるもの)を活用して行われるものです。

宮城県外から訪れる観光客は、県内の観光客に比べみやげものや飲食などでお金を落とす割合が高く、その効果を更に高めようとする狙いが見て取れます。

今回は、この施策がもたらす効果などについて、実際に宮城県が出している観光関連のデータをもとに考えていきます。

追記

本事業は、4月21日に「観光王国みやぎ旅行券発行事業」として正式に発表がされましたので、以下にニュースを抜粋します。

旅行予約サイトでのインターネット販売と、旅行会社での対面販売を予定する。ネット販売は公募型プロポーザル方式で業者を選定し、旅行商品は補助金方式で実施する。事業予算は総額約10.7億円。うち割引財源は8.8億円で、残り1.9億円は広告費や事務などの必要経費に充てるという。

 割引対象となるのは、今年7月~2016年1月の宿泊(県内外客対象)、同期間の外国人観光客向け旅行商品、今年7月~9月の「仙台・宮城観光キャンペーン」期間中の「宿泊+JR」パック旅行商品(県外客対象)、同9月~11月の「航空会社と連携した観光キャンペーン」期間中の「宿泊+航空機」パック旅行商品(同)。

 「外国人観光客向け旅行商品」「宿泊+航空機」は県内全域の宿泊施設が利用対象で、「宿泊」「宿泊+JR」は秋湯温泉エリア・作並温泉エリアを除く仙台市内は対象外。県の担当者は「仙台市中心部は震災前の6割方回復傾向にあるが、そのほかの内陸部や沿岸部は回復していないため、特に遅れているエリアの消費を起こし観光客の回復を図りたい」と話す。

 利用者は、宿泊代金が最大5割引き(1人1泊1万円まで、最大1人2泊まで)となるほか、「宿泊+JR」「宿泊+航空機」では交通費も最大5割引きとなる。

 6月をめどに販売を始める予定で、財源がなくなり次第終了する。他県で懸念されている転売問題について、同担当者は「チケットで販売するわけではないので考えにくい」と話す。

引用元:「観光王国みやぎ旅行券」話題に 宿泊費最大5割引き、観光客誘致図る(仙台経済新聞)

データで見る宮城の観光産業の実情

宮城への旅行と言えば仙台七夕

この施策がもたらす効果を考えるため、宮城県の公式サイトにある観光統計概要(平成25年)の資料を参照して宮城県の観光産業の実情について見ていきます。

※観光客とは、レジャーや行楽などで観光地点を訪れた方(県内在住者含む)を指します

資料によると、平成25年(2013年)の宮城県への観光客は約5,500万人。

震災前の2010年が約6,100万人、前年の2012年が約5,200万人となっており、震災前の水準には及びませんが、観光客自体は震災で中止となったイベントなどの復活により増加しています。

また、観光客が訪れる地域は、松島を含めた仙台圏がぶっちぎりで約3,100万人(松島は500万人)、次いで鳴子温泉などがある大崎市で約900万人、また蔵王などの仙南地域が約600万人、石巻が約280万人となっています。

これは、観光客を集める主要なイベントの上位5つ(※)が全て仙台市のお祭りであることも関係していると考えられます。

※SENDAI光のページェント(約280万人)、仙台七夕まつり(約200万人)、仙台・青葉祭り(約100万人)、みちのくYOSAKOIまつり(約80万人)、定禅寺ジャズフェス(約68万人)

この観光客の中で、宿泊観光客数は880万人程度。この数字は前年とほぼ横ばいですが、復興関連需要が落ち着いてきていることもあり減少傾向にあります。

鳴子温泉郷や蔵王、船形連峰などのおそらく温泉宿泊を利用する観光客数は大幅減していますが、それはこの復興関連需要が落ち着いてきているためと思われ、逆に仙台や石巻などの、観光目的で主に利用される都市部の宿泊施設の利用客は増加しています。

なお、宿泊観光客の居住地別の人数としては、宮城県内が約200万人、関東地方が約155万人、東北の他県が約86万人、中部や近畿地方が約48万人となっています。

観光旅費が半額になる効果は?

宮城・仙台への観光-空の旅

今回の制度の効果を考えるうえでの、この資料で注目すべき点として、観光客一人が1回の観光で使う平均の消費額があります。

以下に資料から抜粋します。

宮城県内の観光客(日帰り): 約4,500円
宮城県内の観光客(宿泊): 約26,000円
県外からの観光客(日帰り): 約10,000円
県外からの観光客(宿泊): 約36,000円

※ただし、消費額と経済効果は異なるようで、日帰り客のほうが宿泊客より経済への直接波及効果は高いようです

これらの金額の内訳としては、県外からの観光客は飲食代・みやげ代・交通費を多く消費しており、宿泊費や入場・観覧費はそれほど変わりません。

宮城県としては観光客を増やすことも大事ですが、観光客一人あたりの単価を大きくするために宿泊客や県外の観光客を呼び込む必要があります。

そのことから、今回の制度では宿泊施設と鉄道や飛行機のパッケージ商品の割引が主な対象となっているのだと思います。

これらを半額とすることで県外からの観光客が増加することが予想されるため、確かに効果は高そうです。

また、単純計算で、今までと同じ金額でより長期間宮城県内に居られることになり、宿泊日数が増えれば、飲食・みやげ代・観覧費などへの波及効果が高まるという計算にもなります。

※なお、ニュースで報じられている中部地方以西の観光客の割引幅が大きくなるという制度も効果の度合いで考えれば理にかなっています。

ところで、この資料の元となっている2013年は4~6月に仙台・宮城デスティネーションキャンペーンが開催された年でもありました。

キャンペーンの効果としては、JRが主体であるということから、特別列車の運行や割引切符の販売、そして提携・協賛する施設の割引などが主です。

あくまでJR主体ということながらも波及効果が十分あったのに、今回の施策では直接的に値引きが普通となってくるため、デスティネーションキャンペーンよりも更に高い効果が期待されます。

施策について残る疑問

仙台駅のはやぶさ

逆にこの施策について疑問点があるとすれば補助総額が約8億円であるということでしょうか。

この制度の主な利用者となる県外からの宿泊観光客の消費額は、前述のとおり、約36,000円です。

遠方のお客さんには実際はもっと消費額が大きくなってくるため、仮にざっくり40,000円程度の宿泊・交通費がかかるとすると、割引額は半額の約20,000円となります。

この計算だと、4万人しか恩恵を受けられないということになり、年間宿泊観光客数が880万人ということから、有名アーティストのLiveさながらの熾烈なチケット争奪戦が発生することが予想されます。

そうなると、予定とおりGWからこの施策・制度が一部開始となれば、期間的に甘く見積もっても7月~8月くらいまでに補助の予算が空になりそうで、効果は非常に限定的になりそうです。

そのため、半額となるのは一部の遠方の地域からの宿泊観光客のみで、近場になるにつれて割引率が減少し、対象の旅行パックも絞る、というのが現実的なところになるのかなと思います。
(半額というインパクトが大きいため、それを広告として使いたかったのかもしれません)

また、東北の他の県の観光客も囲ってしまうというのも少し心配です。
他県も来年以降は真似するところが出てきて、全国的に地域住民生活緊急支援交付金が実質的に観光費に割り当てられるということになってしまう可能性がありますし、事実、岩手県でも「いわてに泊まろう誘客促進事業」として同様の宿泊費半額施策を打ち出してきています。

ただ、いずれにせよ話題性も含めて観光客を呼び込む効果の高い施策であることは間違ありません。

ベガルタ仙台や楽天イーグルスの試合の観戦で訪れる際にも使用可能ですし、地下鉄東西線の開業、仙石線復旧による石巻へのアクセス回復などのインフラの強化もあり、波及効果にも注目したいところです。

また、本事業の対象時期とは少し外れますが観光協会はイングレスのイベントとの連携などにも力をいれており、今後もこのような観光関連事業に期待したいです。(→ingress(イングレス)は観光効果あり?仙台で6/20にイベント開催)

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