大赤字を隠して進む仙台地下鉄東西線 レビュー: 東西線の赤字を裏付ける本

仙台市地下鉄東西線の最大の懸念点・赤字問題

はじめに述べますが、管理人の私は仙台市地下鉄東西線には賛成の立場です。

鉄道は住宅需要や観光をはじめとする大きな需要を呼び起こしますし、発展が無い都市は衰退に向かうものであるというのが私の考える都市像でもあるからです。
(→仙台市地下鉄東西線が出来ることによるメリットを考える)

しかし、現在は仙台市民では無い私ではありますが、実家が仙台にあるということもあり、赤字になる恐れがあるということには大きな不安を持っています。

このように思っている方が、おそらく仙台市民には多いのではないでしょうか。

スポンサーリンク

仙台市地下鉄東西線が赤字になる恐れがある根拠とは何なのか、それは今回紹介する本書「大赤字を隠して進む仙台地下鉄東西線」を読み進めることで分かってきます。

青葉通りのケヤキを守るという考え

ざっくり言うと、この本はWikipediaの仙台市地下鉄東西線の建設についての議論の部分を、オンブズマン側・建設反対側(美仙会)の活動が詳細に記録された内容となっています。

また、Wikiには掲載されていないケヤキを守る、将来の市政や市民にのしかかるであろう赤字を無くす、そのために仙台市地下鉄東西線の建設中止を求める美仙会の活動が記載されています。

本書のトピックの一つであるケヤキの植え替えについては、私はなんとも言えない立場です。

仙台市側はケヤキの老化や道路への干渉、また排ガスを貯めるという主張がなされていますが、本書ではケヤキは植え替えの必要が無いという主張がされており、どちらかというと本書の主張が正しいように思えます。

しかし、私が現在住む東京都立川市の隣の国立市では、町中に桜が植えられており、そこでも木の老齢化問題や道路への干渉問題が出始めています。

このため、木の老齢化という話も今後数十年先の未来を考えれば理解できなくもありません。

追記

2015/02/23に東西線大町西公園駅付近で撤去したケヤキ44本に代わる新たな13本のケヤキが植樹されました。残りのケヤキは4月以降植樹されます。

仙台市地下鉄東西線の問題点には概ね賛成できる

ただし、本書で指摘されている仙台市地下鉄東西線の問題点には概ね賛成です。

古いデータ(第3回パーソントリップ調査)を使った需要予測や、不自然に直角したり駅間が短い路線図(→仙台地下鉄東西線の路線図を眺めて改めて気づいたこと)、市民が毎年30億円+建設費の負担を背負わないといけない。

このような主張が、数字に関してはデータを使って割り出されているので説得感があり、仙台市地下鉄東西線は赤字の”恐れ”ではなく、赤字が”確定”であることが分かる内容となっています。

特に需要予測のところは分かりやすく書かれており、数値では正しいことを言っているオンブズマン側の敗訴という結果には、同情を覚えます。

また、それでいて仙台市側の勝訴が確定した後である2012年に、仙台市が東西線の需要予測を大幅に下方修正(約11.8万人→約8万人)したのはやり方が汚ない、と思います。

しかもそれでも、オンブズマン・美仙会側が導き出した需要である5万人台より多い数値ではあります。

なお、本書の巻末には他の都市のリニア地下鉄である大阪市営地下鉄 今里筋線と福岡市営地下鉄 七隅線の需要予測のデータも記載されていますが、これらは見事に需要予測を大幅に下回った結果となっています。

東日本大震災によって向上した仙台市地下鉄東西線の価値

しかし、です。

この本が出されたのは2010年。

そして、この翌年に発生した東日本大震災によって、状況は一変してしまいました。

震災からわずか3日後に復旧した地下鉄は、地震への耐性を示すとともに定時間内に運行する数少ない運行手段として仙台市民の貴重な足となりました。

また、主に他県からの流入により増え続ける仙台市の人口・住宅需要に対応するため、Wikipediaにもあるように、地下鉄沿線に確保されていた土地に、復興住宅やマンション建設による住宅提供が行われました。

これらは事実であり、仙台市地下鉄東西線の価値や推進の評価が高まったのは頷ける結果だと思います。

そして、この人口流入や、無理やりではありますが、再編されるバス路線により、前述の需要予測が覆りはしないけれど、多少の需要の上乗せができるものだと思います。
(しかし、それよりも自転車通勤・通学が増える未来が考えられますが)

貴重な資料として、手元に保存しておきたい

最後になりますが、本書は普段なら闇に消えるであろう仙台市と闘った側であるデータや記録は貴重な資料です。

震災という災害を経過した今では仙台市地下鉄東西線が赤字路線であることがぼんやりとした認識でしか捉えれなくなっていますが、本書を読むことで、事実を認識としてしっかりと頭に入れることができます。

そういう意味で、特に仙台市民の方は本書を読む価値は十分にあると思っています。

スポンサーリンク