上昇率全国1位、宮城県仙台市や石巻市で路線価が上がり続ける理由
宮城県の路線価が3年連続で上昇率1位
「路線価」とは、主要道路(路線)に面した土地1平方メートル当たりの評価額です。
相続税法に基づいて決められており、国税局が毎年の価格を決定して7月1日に公表、その土地の価値を計るものさしとして、相続税の計算にも使われています。(価格は国税庁のホームページに記載)
来る2015年7月1日に、最新データである平成27年分の土地の路線価が発表されましたが、宮城県は都道府県別の中で全国1位(前年比2.4%増)の上昇率を記録し、3年連続の上昇率1位を達成しました。
この中で、前年より上昇率が更に向上したのは仙台と石巻の計4署で、中でも石巻は7.4%と急激な上昇率を示しています。
東北全体でこそ平均路線価は下落が続いていますが、なぜ宮城県の路線価が上昇し続けるのか、今回はその理由を探っていきます。
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沿岸部で路線価が上昇し続ける理由
沿岸部で路線価が上昇し続ける一番の理由は、東日本大震災の被災者の移転需要の高まりから来ています。
これは、特に石巻などの県内沿岸部を中心に、高台などへの住宅移転が続いている影響が大きいと言われています。
このため、投機的な取引による上昇ではなく住宅のための実需が要因となっており、事実として、震災後以降は東北被災地では住宅着工戸数が増加しています。
なお、近年の路線価データを振り返ってみると、2012年には岩手・宮城・福島3県で揃って震災後初のプラスに転じており、宮城県では46%増となっています。
津波や液状化などの被害を受けた地点が大きく値下がりした一方、津波の被害が小さかった宮城県の高台や内陸部、石巻市では需要が増加しているのです。
仙台市内で路線価が上昇し続ける理由
次に仙台市内の路線価ですが、こちらは上昇理由と一緒に、実際に地価が上昇している場所についても見ていきます。
以下、まずは宮城県の地価上昇について取り上げたニュースを抜粋します。
税務署ごとの最高路線価で最も上昇したのは石巻市恵み野2の石巻工業港曽波神線通りの7・4%(前年5・9%)増。震災後の2012年から4年連続の上昇となった。
続いて仙台市太白区長町南3の太白区役所前通りの6・5%(同3・3%)増。いずれも津波を免れた地域で商業施設が集積し、三陸道やJRなどで遠方から客を集める交通アクセスの良さもある。津波被災者の移転需要も地価を押し上げているという。
県内で最も路線価が高かったのは仙台市青葉区中央1の青葉通り(1平方メートル当たり176万円)。
引用元: 路線価:3年連続で宅地上昇率、全国トップ 仙台、石巻で伸び顕著 (毎日新聞)
このニュースにある通り、宮城県の最高路線価は、仙台市青葉区中央1の「青葉通り」で176万円を記録。
この場所は東北でも1位の路線価で、前年比4・8%増、2年連続での上昇となっています。
2位も青葉区本町2の「広瀬通り」で94万円を記録し、前年比4・4%増となりました。
なお、この仙台市青葉区中央1の青葉通りとは、以下の地図にあるさくら野やパルコの周辺を指しています。
仙台国税局は、地価上昇の理由を、「不動産投資環境の向上によって不動産投資ファンドによる需要が増えたこと」「新規店舗オフィスビルの開発が進んだこと」と分析していますが、全体的に見ると、仙台駅周辺を中心とした再開発や、地下鉄東西線の開業が近づき若林区などの各沿線で開発が活発となっていることが挙げられると思います。(→仙台・新副都心誕生へ?荒井東地区の開発計画)
また、仙台も石巻と同じく、被災者の移転需要も大きいことが挙げられ、沿岸部から内陸部への移転願望が現在でも根強いことを読み取ることができます。
石巻・蛇田地区の人気が顕著に
さて、前述の宮城県沿岸部にある石巻市でも内陸部へ移転が進んでいますが、その移転先の中でも「新蛇田」「新蛇田南」「あけぼの北」の3地区が人気となっています。
この地域は、人口の増加率も著しく上昇しており、人口の急増を受け、復興需要を当て込んださまざまな取引も増えたことで、利便性も一層増しました。
特に津波被害を受けなかった蛇田地区では店舗が集積して、石巻市蛇田新金沼の「石巻工業港曽波神線」の地価は急上昇しています。
2015年現在、蛇田地区にはイオン石巻ショッピングセンターはじめとした多くの量販店などが林立しており、市中心部の商店街では復活を目指した再開発事業が動き出しています。
三陸自動車道の石巻河南インターチェンジ付近にある「石巻工業港曽波神線通り」でも、三陸道の4車線化を受けて利便性が増し、この沿線にもホテルを含めた、飲食店、衣料品店などが立ち並んでいます。
なお、2016年3月には、この近くにJR仙石線の新駅「石巻あゆみ野駅」が出来る予定となっています。(→落ち葉や雪ですぐ停まる..仙山線が遅延・運休しやすい理由)
地価上昇と需要増加のデメリットもある?
同じく再開発事業が進む石巻市の立町2丁目や、石巻商工会議所前の立町1丁目にも、復興傾向が続いており、不動産広告会社DGコミュニケーションズ仙台支店によると、2013年の石巻市の分譲マンションの平均価格はバブル期並みであったそうです。
こうした住宅重要の急増は反面、苦労して家探しをした人々が移転のためにリフォームなどを必要としていても、地元大工が「手が回らない」として転居を待つことになるという現状も生んでいます。
地元の住民の方々にとって地価が上がるのはメリットの面もありますが、不便を強いられているデメリットの面も抱えていることは忘れてはならないと思います。
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